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フルモデルチェンジした第3世代のDomane(ドマーネ)が誕生! 完成車30万円台のDomane SL 5をファーストインプレッション

文・写真 フリーランスジャーナリスト 米山一輝

トレックが第3世代のDomane(ドマーネ)を発表、同時に全世界で発売しました。2012年のデビュー以来、4年ごとにフルモデルチェンジを重ね、今作ではさらにエアロに、速く、スムーズで、多用途に使える万能なエンデュランスロードとして進化。この記事ではモデルチェンジのポイントや、各モデルの特徴、そして最もお求めやすい105装備のDomane SL 5のライドインプレッションをお届けします。

新登場のDomane SL 5

 

石畳を恐れないスーパーバイクとして誕生

2012年に登場した初代のDomaneは、トレック独自の画期的な振動吸収システムであるIsoSpeed(アイソスピード)をシートチューブに搭載し、石畳など荒れた路面が多い「北のクラシックレース」で勝つための戦闘力を備えたモデルとして誕生しました。振動吸収性や走行安定性、そして北のクラシックでトレックの絶対エースとして君臨したファビアン・カンチェラーラの絶大なパワーを受け止める剛性は、ロードバイクにエンデュランスという新たな可能性を切り開きました。

第2世代は2016年に登場しました。IsoSpeedをフロントにも搭載。さらにハイエンドのDomane SLRでは、リアのIsoSpeedが調整式に進化しました。Domaneで産声を上げたIsoSpeedはその後、エアロロードのMadone、シクロクロスバイクのBooneなどにも搭載され、トレックを代表するテクノロジーとして確立されています。

Madone SLRと同タイプの調整式IsoSpeedを搭載するDomane SLR

 

そして新しく登場した第3世代のDomane。モデルチェンジのトピックとしては、昨年登場したMadone SLRで採用されたダンパー付きの調整式IsoSpeedの搭載や、エアロ性能の強化、ダウンチューブのツールストレージ、グラベルやアドベンチャーライドに対応する汎用性の強化、ディスクブレーキ専用化、ユニセックス仕様化、といった点が挙げられるでしょう。走行性能に磨きをかけつつ、新たな可能性を開くモデルチェンジとなりました。

 

エアロ化と汎用性を同時に強化

新型のDomaneは、OCLV 700カーボンフレームのDomane SLRでは、Madoneと共通のトップチューブに接続する調整式IsoSpeedを搭載します。最もソフトな設定にした場合、旧モデルに比べて振動吸収性が27%アップし、最もハードな設定にした場合でも、振動吸収性は14%アップします。OCLV 500カーボンフレームのDomane SLでは、従来と同じ機構のシートチューブIsoSpeedを搭載します。両モデルともに、引き続きフロントIsoSpeedも搭載します。さらにドマーネSLRでは、振動吸収素材を内蔵したIsoCore&IsoZoneハンドルバーが、手のひらへの振動を20%カットします。

 

フレームのフォルムは空力を意識したよりシャープなものとなり、空気抵抗も数%低減されました。ケーブルはヘッドチューブ上部から内蔵されるセミインテグレートとなり、ハンドルやステムに汎用性を持たせつつ、よりスマートな見た目とエアロ性能の向上を図っています。BBは新たにねじ切りタイプのT47 BBを採用。ワイドなBBでフレームのレスポンスが向上したほか、タイヤクリアランスの拡大、サービス性向上に寄与しています。

フレーム内に小物を収納できるダウンチューブストレージ

ダウンチューブストレージは、ダウンチューブのボトルケージ台座の部分からフレーム内部にアクセスするもので、ワンタッチで開閉でき、パンク修理キットやボントレガーマルチツールをスマートに収納します。完成車には収納に便利な専用BITSバッグが付属します。フロントのBlendrステムに加え、シートポスト後部にリアライトマウントが追加され、前後ライトをスマートに装着可能です。

ダウンチューブストレージへの収納に便利なBITSバッグが付属

 

タイヤは標準で32cのワイドタイヤを装備。38cまで余裕を持って対応するタイヤクリアランスを確保し、フェンダー(泥除け)を装備しても35cのタイヤを装着可能です。フェンダーマウントを装備するなど、ロングツーリングも意識したものになっています。

先だってトレックは、ハイエンドロードでのディスクブレーキ専用化を発表しましたが、ドマーネは全モデルがディスクブレーキ仕様のみとなりました。また全てのモデルがユニセックス設計となり、サイズは44cmから展開、全てのカラーを全てのサイズで選択可能となりました。

 

 

Domane SLをファーストインプレッション

注目の新型Domaneの実車に乗ったファーストインプレッションをお届けします。選んだモデルは、あえてのDomane SL 5。105装備で完成車30万円台前半で購入できるモデルで、最も身近な1台といえるのではないでしょうか。THE EARTH BIKES代表の野口忍と、自転車メディアでインプレッション経験が豊富なライターの米山一輝が、それぞれの目線から新型Domaneを語ります。

 

欲しいテクノロジーが一台に凝縮:野口忍

第3世代となるドマーネが、3年半ぶりにフルモデルチェンジを果たし登場した。思い起こせば2012年にトレックがサポートするプロツアーチームの「レディオシャック・ニッサン」のエースライダー、ファビアン・カンチェラーラ選手のクラシックレース制覇の為に、ドマーネが開発されたのだった。

IsoSpeedという、シートチューブをしならせて快適性を高めるというトレックのエンジニアの発想には度肝を抜かれた。そしてカンチェラーラはパリ〜ルーベや、フランドルと言ったクラシックレースをドマーネで制している。いずれも少人数でのゴール勝負になり、スプリントでライバルを下している事からもその反応性の良さもうかがえる。

さて、今回はセカンドグレードのドマーネSL5のインプレッションをお伝えする。まず今作ではディスクブレーキ仕様なのに、Discの文字がバイク名から無くなっている。最初は記載ミス?かとも思ったが、2020年モデルからはドマーネに関してはディスク仕様しか展開が無いため、バイク名からDiscが無くなったということだった。トレックの場合、ヨーロッパ、北米でのシェアは今や9割ディスクブレーキというから、2020年は日本国内でも本格的なディスクブレーキ元年と言ってもいいだろう。

 

最初にバイクを見て思ったのは、まるでマドンのようなルックスを手に入れ洗練されたかっこいいバイクだなという点だった。どちらかというとこれまでのドマーネはラウンド形状のチューブを使っていたが、新ドマーネでは角ばった印象が強くなり、いい意味で尖ったバイクのような印象を受けた。実際ワイヤー類も内装になり、エアロ効果も手に入れ、前後IsoSpeed搭載と欲しいテクノロジーが一台に凝縮されたようなバイクに仕上がっている。

ケーブル類はヘッドから内装となるセミインテグレートに

組み立て後、早速軽く乗ってみたが、これまで以上にその快適性に磨きがかかっているではないか。32Cというやや太めのタイヤがもちろんそう感じさせる部分もあるだろうが、その尖ったような見た目とは裏腹にいい意味でマイルドな乗り味だ。

 

32CにディスクブレーキにIsoSpeed搭載ってもう最強ではないかと本当に思う。SLRはもちろんプロのレースでも戦える能力を備えたポテンシャルだろうが、SLに関してはこれまで以上にロングライドやグラベルを意識した作りになっていると感じる。実際、近くの河川敷のサイクリングロードでの走行時も、細かな砂利が落ちている箇所やダートでの走行時の安定性は、やはりドマーネがなせる強みだろう。ホイールベースがエモンダと比べて約2.5㎝長く作られ、BBドロップも通常よりも下げられているエンデュランスジオメトリーは直線安定性はもちろん、コーナーリングでのトラクションやハンドリングコントロールが思ったようにラインをトレースしてくれ高い安心感が得られた。下りでの路面のギャップや急な路面の変化にも即対応できるといったポイントも、ロードバイクを安全に楽しむという意味では必要不可欠な要素だと感じる。

 

時々年配の方や初めてロードバイクに乗るお客様から「一般道は車も当然ながら路面状況が良くなかったり、狭い車道の左側ギリギリを走行することが怖いから車で郊外に移動し、そこからライドを楽しんでいる」という声も聞いたりすることがあるが、これなら通常のロードバイクよりも遥かに街中での走行も安全にこなしてくれるだろう。

 

「ドマーネの乗り心地ってどうなんですか?」って時々聞かれることもあるが、そういう時に自分はいつも「路面の凹凸が激しい箇所に通常のロードバイクで突っ込むと激しい衝撃と突き上げを身体に感じるが、ドマーネに乗るとその凹凸に薄いカーペットを敷いてあげたような角を取ってくれる乗り味になる」という説明をしている。そんなカーペットの上を走行しているかのような乗り心地を是非とも体感していただきたい。

 

最近はグラベル用のロードバイクも増えてきているが、現実問題日本の道路環境ではなかなかグラベルを走行する機会は少ない。あえてそういう環境を求めてライドしないといけないが、ドマーネの場合メインはもちろんオンロード用のロードバイクなのだが、必要に応じてちょっとしたオフロード走行なら十分対応してくれるため、グラベル走行も可能にしてくれる究極のロードバイクではないだろうか。

SL5の場合は、ホイールを軽量モデルにして、タイヤを25Cや28Cに変更するだけで一気に戦闘能力の高いバイクに様変わりする印象を受けた。

いずれにしても最新のカーボンロードバイクの洗練されたルックスに、乗り味は身体に優しい衝撃吸収性、そして安定感が高いハンドリング性能を身に纏った新ドマーネは、トレックの2020年モデルの中で一押しとなることは間違いない。

 

 

走りのイメージが湧くモデルチェンジ:米山一輝

新しいドマーネは、まず見た目が洗練されましたね。ハイエンドのドマーネSLRだけでなく、セカンドグレードのドマーネSLも前モデルの「お古」ではなく、完全にフォルムを刷新してきたのが好印象です。シートピラーが従来の被せるタイプでなく、差し込むタイプとなり、シャープでスリムになりました。

トレック独自のIsoSpeedは、リアはSLRとSLでは異なる機構を搭載していて、マドンSLRと同タイプのSLRに対して、SLは初代ドマーネから受け継ぐシートチューブタイプ。カンチェラーラが全盛期で北のクラシックを勝ちまくっていた時期に登場した初代ドマーネは衝撃的でした。SLは初代ドマーネの直接的な系譜と呼べるかもしれません。

Domane SLは、シートチューブとヘッド部に、振動吸収システムIsoSpeedを搭載

 

乗ってみた感じはまず、地面から浮いて走っているような感覚だということ。普段自分はアルミのエモンダに乗っているのですが、違いは明確でしたね。いつもだと乗り方や体重移動で衝撃をいなすところを、バイク任せにして行っても問題がないというか、むしろ積極的にバイク任せにしちゃった方が具合がいい。どっしりと後ろ乗りでパワーを掛けていきたいバイクです。

 

より違いを感じるのは、荒れ気味の路面が続いたり、その中でステアリングしたりするなどのコントロールをするときで、衝撃をいなしつつコントロール性も確保されています。しっかりタイヤが路面に追従できているということでしょう。

フェンダー用のダボ穴がエンド部に標準で用意されている

 

一般のライダーがパリ〜ルーベを走るなんてことは勿論ありませんから、実際にドマーネに乗って具合が良いシチュエーションというのは、一日中走り続けるようなロングライドになるんじゃないでしょうか。レース中心だとか、ある峠に絞ってタイムアタックするとかだと、マドンやエモンダが向いているかもしれません。一方で旧道や裏道を組み合わせた、獲得標高何千mみたいなコースに一日がかり挑戦するような走り方が、最近じわじわと広がってきている印象で、そういう冒険的なライドにはドマーネがベストマッチだと思います。

 

新しいドマーネはレースでも使える足回りを持ちつつ、ロングライドで役立つギミックが色々と追加されていますね。ダウンチューブ内にチューブや工具を収納できるストレージは、その最たるものでしょう。ロングライドにおけるロードバイクの収納問題は意外と深刻で、今自分はボトルケージにはまるツールボックスを使っていますが、本格ロングだとダブルボトルにしたいので、ここの分をどこに収納しようかという話になる。ダウンチューブ内に収納できる量としては、ジャージのポケット1つ分くらいだと思いますが、これは思った以上に大きいと思います。

 

新型ドマーネは走りに直結する面でも、それ以外の装備面でもキャラクターがハッキリしていて、このバイクでどういう走りをしよう、あるいはこういう走りをしたいからドマーネだな、というイメージが湧きやすくなったと思います。今回試したSL5のパッケージングとしては、ある程度チューン・アップの可能性を残したものになっているので、自分色にカスタマイズしていく楽しみもあるのではないでしょうか。

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山一輝(よねやま・いっき)

元ロードレース選手のフリーライター。 運命のいたずらからロードレースの世界にはまり込み、 15年くらいの選手生活でトップ選手に千切られる日々を送りながら、たまにJBCFレースや国内UCIレースや全日本選手権TTなどで、2位とか3位とか4位とか5位とかの微妙な成績をいくつか収めたこともある。当時所属していた チームの広報も兼ねていた流れから、自転車関連のWeb媒体2つの立ち上げに関わり、今も自転車レース界隈で年を重ねている。

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野口忍(ノグチ シノブ)

「THE EARTH BIKES」の創立メンバーで代表。
トレックサポートのプロサイクリストとして、マウンテンバイク・クロスカントリー競技において、アジア選手権3度制覇、全日本選手権優勝など、数々の大会で勝利を収め、2007年度を最後に現役引退。
引退後は、トレック・ジャパン株式会社に入社し、マーケティング部に所属。ファビアン・カンチェラーラ、アルベルト・コンタドール、別府史之といった世界トップアスリートのサポートや、新製品発表、プレシジョンフィット講師、メディア対応などトレック・ジャパンの顔として活躍。マウンテンバイクはもちろん、現役時代にはシクロクロスにて世界選手権日本代表や、ロードも「キナンサイクリング」のメンバーとしてツール・ド・北海道などにも参戦。現役引退後は、趣味としてトライアスロンに挑戦し、2015年宮古島ストロングマンでは年代別3位、総合16位でフィニッシュしている。 「ノグネン」のニックネームでみんなから愛されている。